二、(5)広がる危機

第一章 浄水場喪失

 宇和島地域の半島部、蒋渕地区でも配水管の破損が原因で小規模な断水が発生してました。その対応をしながらも、14時30分頃には三間地域で3カ所応急給水所を開設することができたのはひとつの前進でした。ただ、15時開始の災害対策本部会議に私が直接出席し、水の危機と急務の給水車増強について声を大にして伝えていた頃、津島地域の御槙(みまき)配水区でも大きな危機が訪れようとしていました。

 御槇配水区では良質な表流水を緩速ろ過で処理し、約360人の地区住民に配水しています。その取水堰に大雨の影響で巨石が流入し、原水がストップしたのです。

 このままでは配水池が空になる明朝から断水を余儀なくされます。規模は小さいながら重大な危機を我々に予感させました。しかしその後、杉下室長を始めとする津島水道管理室の職員が、ポンプでの強制的な取水作業を進めます。それが功を奏し、翌7月8日午前7時30分にその危機を脱しました。このことは、どよーんとした空気に包まれていた我々にとって、小さいけれど確実に届いた光でした。

 というのも遡ること1時間半の午前6時頃、当日分の薬を母に渡そうと一時帰宅していた私が水道本局に帰った頃、市最大の配水区、宇和島地域(旧宇和島市)の大半をカバーする丸山配水区で、毎時150立方㍍の漏水が発生しているとの知らせが飛び込んでいたからです。丸山配水池は容量が7000立方㍍、その水が数日で空になる。そうなれば断水人口は吉田・三間の比ではありません。それに御槇の断水が間もなく始まったとすると、どうあがこうとお手上げです。この時私は、『終わった』と正直思ってしまっていたのでした。

 そんな中でのひとつの朗報、気の落ち込みを少しだけ回復させてくれるものでした。

ー この記事の原文は水道産業新聞2020年(令和2年)9月28日版(第5444号)に掲載されたものです ー


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