三、(5)身銭を切る消防団員

第一章 浄水場喪失

 この日、松山市公営企業局の支援で吉田地域への応急給水所開設の展開が少し進んだのでしたが、一方の三間地域は初日同様3カ所で運営を継続していました。

 19時頃のこと、都市整備課時代の部下S君から長々としたLINEメッセージが入ってきました。

 内容は、3カ所の三間地域応急給水所のうち地元消防団員が充水活動を行ってくれている二名小学校給水所のことです。このことは既に私の耳に入っています。ただ彼によると、実は一人の消防団員が個人負担でトラックをリースするなど、消防団活動を越えた奉仕活動をしているとのことです。S君は、水道局による運営に切り替えて欲しい、また、これまで身銭を切っていた分の費用について考えてあげて欲しいと記しています。

 私は心を鬼にして返信しました。今はそこら中でたくさんの人が身銭を切った活動をしていること。三間地域は道路通行止めも少なく、吉田地域と違い応急給水所までの往復や他の応急給水所へ向かうのも容易なこと。加圧給水車を含めた支援が全く足りず、公的な応急給水所の展開は思うように進まないこと。そのため、地元協力の前提で早期に要望に応じ展開した二名小の応急給水所は、その運営に協力を得ることができなくなれば閉鎖せざるを得ないと。

 ただ私の心の中には、この消防団員の善意を超えた心意気、そして水道局の事情を理解した上で敢えて私に進言してくれた元部下の気持ち、それらが大きく残ったのは言うまでもありません。

ー この記事の原文は水道産業新聞2020年(令和2年)10月12日版(第5447号)に掲載されたものです ー


《無断転載はお断りいたします。》

*登場する人物や組織に対する私の意見・感想は、個々の評価を意図したものではありません。また、臨場感を伴わせて全容をお伝えするために人名を記載していますが、文面に対する人それぞれの捉え方に配慮し全て仮名としています。ご理解のほどよろしくお願いいたします。

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました