五、(2)水道以外でも

第一章 浄水場喪失

 午後1時30分からの本庁災害対策本部会議で、早速その件を報告したのは言うまでもありません。その時点で最大の課題となっていた水道被害対応で、日本水道協会に続き歴史姉妹都市の仙台市が宇和島を支援してくれる、この事実が宇和島市を勇気づける大きなニュースとなったのは間違いなかったでしょう。

 その災害対策本部会議では、前へと向かう情報が2点報告されました。

 1点目は、土砂災害で被災し通行止めとなっていた吉田地域の白浦門田橋が、4㌧車以下限定ながらも通行可能となったことです。このおかげで、玉津地区へはこれまで北隣の西予市経由で大きく迂回して応急給水に向かわざるを得なかったのが、既に応急給水ルートとして確立している〝畔屋三つ尾の三叉路〟経由での輸送が可能となりました。これで時間短縮・労力低減が見込めることとなりました。

 また、玉津地区には独自表流水源があります。この時点では豪雨による原水の濁度が収まっていませんでしたが、その低下後、土砂崩れに伴い各所で損傷している配水管の復旧を進めていけば南隣の白浦方面へその融通が可能となってくるのです。Bさんが犠牲となるなど大きな被害が出たのがその白浦です。早く水を送ってあげたい。

 2点目は、三間地域の給油所で災害協定に基づく給油支援が可能となったとの情報です。これには給水支援事業体の車両への給油も含まれているなど、三間地域への応急給水効率向上に寄与してくれそうな情報でした。

 このような災害協定を以前より進めていた危機管理課の職員、川下課長以下の少人数で多くの業務をこなしている姿に、私の心の中は以前から感謝の思いでいっぱいでした。

 ところでこの日、災害対応とは無縁の委員会が柿原水道本局で開催されたのでした。ほぼ全てを災害対応に注力しているこの時、敢えて開催に踏み切ったのはプロポーザルの選定委員会でした。

 宇和島市水道局では経営基盤の強化を目的に、これまでメーター検針や浄水場の運転などの官民連携を進めてきました。その最後の仕上げに、料金徴収や閉開栓など当時の業務課が持つ業務の半分近くを、平成29年度当初から民間に委託する計画で手続きを進めていたのです。

 この日は、その第1回選定委員会を開催する予定だったのでした。ただこの状況です、鴨脇業務課長から開催の是非について相談を受けた私は、しばらく考え込みました。年明けに職員から民間企業への引継ぎを開始しなければならないことから逆算すると、猶予は全くありません。この日の委員会延期は委託開始の延期に直結します。

 私は決めました。選定委員会の進め方の確認と顔合わせの色が濃い第1回プロポーザル選定委員会を、何としても無理やりにでも予定通り開催すると。

 委員の過半数は外部委員です。ただその方々を含め資料は全部事前に配布していますので、目を通してもらっているはずです。もし災害対応で急な動きがあればその時は委員会の途中中断になってしまいますが、やってみなければわかりません。

 結果はオーライ、短時間で無事に終わったことで災害対応への影響はほとんど無く、次回第2回委員会へスケジュールを繋げることが出来ました。良かった!

ー この記事の原文は水道産業新聞2020年(令和2年)11月12日版(第5454号)に掲載されたものです ー


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