三、(2)市の建設部と総務部

第二章 一歩一歩

 次に、その仮設管等資材の仮置き場をどこに確保するかという点が課題となりました。私の前職は公園を所管する都市整備課長、最適地はどこなのかすぐに思い浮かびました。

 三間地域の代替浄水施設建設予定地は、地区最大の農業用溜池の中山池のほとりにある中山池自然公園です。そこは施設本体の工事で余裕が無くなる可能性がありますが、もうひとつ、三間町運動公園が市道を隔てて隣接しているのです。

 私はすぐに本庁建設部の川田都市整備課長へ電話し、使用の了承を取り付けました。事後申請の了解と共に。

 15時50分以降、立て続けに本庁総務部総務課からの電話を受けました。

 1件目は酒田人事係長です。その日愛媛県の災害対策本部会議へ同席していた副市長から電話が入り、その場で水道の早期復旧を要望したとの連絡が入ったそうなのです。その関係で、今後県から水道局側への連絡窓口を決めておく必要があるとの用件でした。水道局内の後方支援を指揮している鴨脇業務課長と相談し、業務課計量係の米山係長を任命することとしました。

 2件目の相手は森総務課長補佐です。市の災害対応人員不足を補うため、職安に求人情報を出すこととなったとのことで、水道局としての必要人数を問われました。この人手不足の中、期待せず10名と答えましたが、おそらく数人も集まらないでしょう。

 総務課も榊課長以下頑張っているのでしょうが、どうしても水道局の我々とは特に初動の切迫感に差があります。部局毎のピークには違いがあること、特に命の水を扱う水道局は発災初期が最も大変であるということを、もっと理解してもらいたいというのが本音でした。

 今度は16時、建築住宅課で建築確認を担当している皆田君から電話です。私からの質問に対する回答でした。代替浄水施設建設の際、建屋を伴う整備に建築確認申請が必要かという問いかけをしていたのです。仮に必要である場合、その工程短縮を建設部あるいは規模によっては県にお願いしておかなければなりませんので。

 帰ってきた答えは「不要」でした。発災後1カ月以内に着手する災害復旧用の建築物は、建築確認申請が免除されるとのことです。これで心配事がひとつ消えました。

 18時からの本庁災害対策本部会議では、昨日からの動きを報告しました。特に、代替浄水施設建設が南予水道企業団の方針として固まったこと、そして、厚労本省の江戸本補佐にポンプの納期前倒しに向けた働きかけを依頼したことなどです。

 この日の夜、吉田地域で行っていた試験通水の実施地区全てで水質検査が合格となり、三間地域での昨日までの155戸の断水解消に加え、法花津配水区全域と長谷配水区の一部1041戸で断水が解消しました。吉田地域では発災後10日目にして初めての断水解消です。

 発災11日目の7月17日午前8時過ぎ、宅配便関連企業の担当者が私を訪ねて来ました。三浦配水池に保管中の6㍑ポリタンクを、新たに資機材拠点となった伊吹町の青果市場へ運搬してもらえることとなったため、その鍵を取りに来たのです。財政課が担当で進めてきた災害協定は昨日締結され、早速それに基づく支援に乗り出してくれました。これでいざという時に動きがとりやすくなります。

 10時50分には、同い年の建設部香堂部長へ私から電話を入れます。三間地域の仮設送水管を市道に埋設する際、埋め戻しは流用土で行いたいとの申し入れでしたが、結果は快諾です。残土を三間町運動公園に仮置きする点についても同様に。 

 香堂部長は旧津島町出身で、漁港整備のキャリアが最も長いのですが、水道の経験も長く私の前任水道局長でした。逆に私は平成28年度(2016年度)まで建設部一筋で、水道局長を任命された際には意外感から非常に驚きながらも、初めての異動を好奇心を持って喜んだものです。

 この災害、香堂と私の役職が逆だったらなら、この災害での対応やその後の人生はどうなっていたでしょう。〝たら話〟はさておき、運動公園の工事などで一度に多くの施工会社を監督・指揮していた私が、災害対応の多種多様な方々と相対していたことを思うと、何か運命的なものを感じざるを得ません。

ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)1月7日版(第5467号)に掲載されたものです ー


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