三、(3)松山市公営企業局(四)~日水協ルートと励まし~

第二章 一歩一歩

 その1時間ほど前、仙台市水道局の二人と協議を行っていました。仙台市は宇和島市への統括班派遣を正式決定してくれました。早速日水協ルートでの申し入れに移ります。一歩前進です。

 11時15分仁村給水課長に、水道管メーカーから200口径の仮設管1000㍍分が発送されたとの電話が入りました。直後、今度は仙台市水道局の桜島次長から私への電話で、統括班4名が2日後の19日夕刻到着する見込みとの嬉しい情報がもたらされます。

 良いニュースが続き、意気揚々と仙台市の統括班派遣受諾の件を松山市公営企業局へ連絡したところ、思わぬ言葉が返ってきました。

 統括班を含む派遣は日水協ルールに従い愛媛県支部内でリストアップし、それで駄目なら中国四国地方支部、そして本部の順に範囲を広げていくよう、日水協本部から指示を受けたとのことでした。

 私は頭の中は、喜怒哀楽のどれも当てはまらない、いや全てが入り乱れた感情で埋め尽されました。これまで仙台市に対しお願いしてきた調整が全て無駄となり、決まりかけていた支援が振り出しに戻ったのです。日水協本部の方針は十分理解できます。効率や秩序の面はもとより、万が一東日本で急な支援が必要になった時などのことを考えるとそうなるのは当然です。

 ただ…、仙台市は伊達つながりで400年以上のお付き合いのある言わば親戚です。その親戚が支援すると言うのに、なぜそれを受けることができないのか…。この方針は頭では理解できてもしばらく自分の中で消化しきれませんでした。

 水道の世界とは全く異なるルールで、給水所運営に必要な多くの人的支援を行ってくれていた、豊後水道対岸の大分県庁などのように、別扱いにしてくれないのか…。

 そんな思考回路がもつれかけていた私の耳に受話器の向こうから聞こえてきたのは、そのモヤモヤを吹き飛ばす平松管理者の言葉でした。「施工業者が足りない場合の松山市管工事組合からの派遣も含め、何とか松山市が考える」と力強い声で。

 仙台市水道局がしてくれた準備は無駄になったかもしれませんが、これまで以上に松山市公営企業局に頼ろうと私が気持ちを切り替えたのはその時のことでした。

ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)1月14日版(第5468号)に掲載されたものです ー


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