さて、今日は応急復旧の方針と断水解消スケジュールを発表する日です。この発表後であれば、全ての状況を前市長にも包み隠さず伝えることができたのでしたが、これだけは致し方ありません。
もどかしい気持ちを抑え、柿原水道本局から車で約10分の宇和島市本庁へ向かいました。
市長室・副市長室を始め、市長公室や、危機管理課を含む総務部のほとんどの課は本庁4階に配置されています。エレベーターのドアが4階で開くと、目の前のホールは既に多くの報道関係者と見られる人でごった返しています。その間を縫って私と南予水道企業団竹本事務局長、そして同企業団の水道技術管理者を兼任している保利浄水課長の3名は市長室に入りました。そこで市長・副市長、市長公室の広宿室長・木場室長補佐との事前打ち合わせを行うためです。
市長室で始まる報道発表では、市長を中心に向かって左に私・南予水道企業の2名、少し間隔を空けて副市長、右に進行を兼ねた市長公室の2名がそれぞれ立ち、最初に市長が方針等を発表します。そしてその場で、市長への質疑応答を幾つか受けます。細かい質疑は、ドアで結ばれた隣の特別室へ場所を移し、私と南予水道企業団の2人が報道関係者と着座で向き合ってじっくり受ける。以上のとおりの段取りを確認しました。
11時、開始です。市長は議会答弁を含め原稿をそのまま読み上げることは非常に少なく、内容を確認・消化して自分の言葉で相手に伝えます。ただこの時は、「間違ってはならないので、原稿をきちんと読む」と事前に我々へ宣言していた通り、原稿から目を離さず慎重に読み上げます。副市長は原稿を低く持ち、うつむき気味にそれを見ながら市長の読み上げに間違いが無いか確認しています。それが終わり質疑応答、答え辛いものは無いようです。
約10分後、私は南予水道企業団の2人と隣室へ移ります。副市長は会見席ではなく報道陣の後ろに立っています。
まず事業主体の南予水道企業団竹本事務局長が資料を基に建設場所や方法、そして工程などを説明しました。その後、2つの日本を代表する通信社を含めたくさん集まった報道各社からは、資料内容の確認を含めて次から次へと質問が飛んできます。答え辛い質問はここでもほとんどありません。質問は南予水道企業団に関するものがほとんどのため、竹本事務局長が誠意を持って回答していきました。ただ、被災後の激務の疲れの影響か、次第に的が外れかけた回答が出始めました。宇和島市水道局担当分についての質問はほとんど無く、じっと質疑を聞きながら回答を頭の中でチェックしていた私は、時々助け船を出すことによってこの会見に参加し始めました。
質疑の様子を見ていた進行の市長公室木場室長補佐が、頃合いを見計らって質疑の終了を宣言しました。この節目の報道発表、何とか乗り切ったようです。質問に辛辣なものはありませんでした。断水の原因が災害によるもので、数カ月から数年後と噂されていた応急復旧が、それよりずっと早い8月下旬となったことで、おそらく報道機関も評価してくれたのでしょう。
記者会見が一応の終了となったあとは、雑談のような細かい質問が続きました。今度は宇和島市水道局へのものもあり、私の出番も増えていきます。ただ全てが好意的に感じられ、私はその後質問が出尽くすまで、心に少し湧いた安堵感が手伝い回答し続ける意欲を失わなかったのでした。
ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)2月18日版(第5477号)に掲載されたものです ー
《無断転載はお断りいたします。》
*登場する人物や組織に対する私の意見・感想は、個々の評価を意図したものではありません。また、臨場感を伴わせて全容をお伝えするために人名を記載していますが、文面に対する人それぞれの捉え方に配慮し全て仮名としています。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
コメント