さて16時、最大級の驚きを私にもたらせた来客がありました。
是川水道課長です。何の前触れも無く、日本の水道界を束ねるあの厚労本省水道課長の顔が突然私の部屋の入口に見えたのです。
私は何が起きたのか頭の整理ができません。ただこの顔はこれまで何度も水道産業新聞紙上を中心に見たことがあります。だからどこの誰なのかは瞬時にわかりました。でもなぜここにこの顔が…、と戸惑っていると、是川水道課長は写真で見た通りの温和な表情とそれに似合った声で、自己紹介と突然の訪問を詫びます。『詫び?逆でしょう』と思いながら、正気に戻ってきた私は来訪に対しお礼を言います。
部屋に招き入れ、また仁村・鴨脇両課長を呼び、取り急ぎ手持ちの資料を基にした現状説明を行いながらしばらく話しました。
実は是川課長は宇和島市北隣の西予市出身で、高校は私や両課長と同じ同窓生です。また、接点は無かったようですが鴨脇課長の同期のようです。以前からそのことを知ってはいたのでしたが、まさか面と向かって会う機会は無いだろうと思っていました。それがこんな形で実現するとは。
是川課長はもっと早く中四国の被災地に入りたかったそうです。ただ、発災後ずっと本省で是川砲を放ち続けなければならなかったため、現地入りが遅くなったとのことです。地元の人が水道課長だという事実は、会う前から我々の勇気となっていたのでしたが、実際に顔の見える関係となり、それが百倍に増したのは言うまでもありません。
是川課長が次の目的地に向かった16時50分、私は県内に本店を置く銀行の宇和島支店長へ電話を入れました。同行は宇和島市水道局のメインバンクです。今回の災害で、同行は応急給水所へサポーターを派遣してくれていました。そのお礼の電話を遅ればせながら入れたのでした。
ただ、私に伝わって来ていない同様の支援は、もっとたくさんあったことでしょう。でもそれを全て把握しきれない、それが災害対応時には普通の事なのかもしれません。
その日の本庁災害対策本部会議に向かう前の18時15分、松山市公営企業局の平松管理者からの電話です。日水協へ要請中の技術者に求める支援内容を問われ、また、その派遣は日水協ルートで行う旨の確認がありました。
宇和島市の気持ちを理解しつつ一方では日水協ルールに気を配る、その申し訳ない位置に立ってもらっている平松管理者には感謝の気持ちで一杯でした。
独自水源による断水解消も、どうやら限界に近づいてきたようです。こののちの一週間で30戸がそれに加わりましたが、それでも約26%の1734戸が限界点。残る4834戸に水を送るため、1日でも早く代替浄水施設を完成させなければなりません。
ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)3月1日版(第5480号)に掲載されたものです ー
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