それから間もなくの19時15分、本庁財政課の高山課長から電話です。歳はかなり下なものの私にタメ口をきく彼ですが、例外的に私は嫌に感じていません。そんな彼からいつもの口調で出てきたのは、代替浄水施設からの通水開始時期の前倒し見込みに関連する事です。
実は、国を始めとした関係機関による、地元の人間では想像もつかないくらい大きな力のおかげで、当初8月下旬を目標として公表していた通水開始が、8月上旬へと大幅に前倒しされる見込みとなっていたのです。この件はまだ精査中で、しかもトップシークレットでした。財政課は応急給水の協力者ではありますが、それが〝外部〟扱いと考える同課に流れているのですから、私はいつに無く彼に対し強い口調で尋ねます。「誰から聞いた!」と。少々戸惑った彼はオブラートに包んでその情報源を私に伝えます。そして情報源は、この件が応急給水体制を左右する事と判断し伝えてきたのだろうとも。〝ある程度〟納得した私でしたが、彼に私の危惧を情報源に伝えておくよう半ば指示し、私の望む回答が彼の口から出たのち本題に入りました。
財政課は支援物資の取りまとめをしていました。その中には各地から送られてきたペットボトル水やポリタンクも含まれています。
仮に断水が解消された場合、その善意の支援が無駄になってしまうのではないかと彼は言うのです。冷やした頭で『なるほど』と思った私は、応急給水を担当している給水課と後方支援をしている業務課、その両課長から意見を聞いたのちに再度連絡することとし一度電話を切りました。
この件は結局、半分程度を放出していこうという事に決まったのでしたが、「下駄を履くまでわからない」「勝負は試合が終わるまでわからない」のとおり、安心するのはまだ早かったという事実を、後になって思い知らされるのです。
発災16日目の7月22日日曜日、三間地域での仮設配水管布設工事が本格的に始まったこの日の午前9時30分、昨晩は実家泊まりだったのでしょうか、是川水道課長が昨日に続き再び来局しました。
呉市で資材納入が一部遅れているとの、予期せぬ最新情報が今朝入ってきたとのことで、悔しい表情が見て取れます。完璧を目指す是川課長のような方々に、我々被災地は助けてもらっている事実を垣間見た朝でした。
この是川課長へ私は一つ問いかけをしてみました。吉田地域のC社長から融通させてもらおうとしていながら、セカンドプランへとその扱いを置き換えた個人所有井戸の件です。
我々の判断に是川課長は理解を示してくれました。代替浄水施設からの通水開始予定時期を考慮するとタイミングがかなり微妙になるという、我々と同じ感想と共に。
ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)3月18日版(第5484号)に掲載されたものです ー
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*登場する人物や組織に対する私の意見・感想は、個々の評価を意図したものではありません。また、臨場感を伴わせて全容をお伝えするために人名を記載していますが、文面に対する人それぞれの捉え方に配慮し全て仮名としています。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
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