一、(10)仙台市(六)~仙台市総意での水道支援~

第三章 一日でも早く

 この日は電話や報告が続きます。14時45分、帰還した仙台市水道局の桜島次長から電話です。

 歴史姉妹都市の仙台市から、市長・議長・水道事業管理者(局長)が、それぞれ別日程で宇和島を訪れることが決まったそうです。更に仙台市から宇和島市への支援はこの時点で水道関係以外無かったことから、この支援は歴史姉妹都市として今後も続けるという方針が市の総意で決まったとの、涙が出そうになるほど頼もしくありがたい情報も続きます。しかもこの支援の件は、仙台市から日水協本部と関連都市へ直接連絡しておくという配慮と共に。

 15時10分、竹本南予水道企業団事務局長から、翌日の知事・市長のスケジュールに若干の調整が加わったとの電話が入ります。私はその電話を終えたのち、業務課の米田主任と給水課の照崎専門員を部屋に呼びました。

 私は数日前から、支援を含めた今後の水道局の体制について考えていました。これからも給水支援は当面受け続けなければならない。そして、復旧も宇和島市水道局の職員だけで進めることは到底できないため、支援に頼らざるを得ない。その時不足してくるのが、それだけの人員が詰め、協議し方針を立て整理していく「指揮所」です。この時点で既に柿原水道本局2階フロアは、会議室や資料室を含め満杯状態だったのですから。

 私は二人に直接命じました。別棟浄水棟2階にある会議室を、今後の指揮所として使用できるよう、有線ネットワークを整備しておくように、と。

 宇和島市は、総合行政ネットワーク(LG-WAN)に接続しています。その関係でクライアントPCは、各々内部でインターネット系とイントラネット系が分離されていて、その間は受け渡しシステムを経由する必要があるなど、支援事業体等外部関係者がフル機能を使うことはできません。ただ、インターネット系を使っての情報収集やウェブメールでの送信、また、IP電話による内外線電話等、ネットワークが無ければ少なからず支障をきたすこととなるでしょう。幸い3階の監視室までは庁内LANが届いていますので、彼等の手でその事前整備は可能なようでした。

 なおこの災害で宇和島市は通信事業者から支援を受けていました。無線ルーターとノートパソコンです。

 水道局には、1台の無線ルーターと数台のノートパソコンが割り当てられました。そして支援の事業体へそのセットを渡し、インターネット系作業に活用してもらったのです。ヒト・モノ・カネと共に重要な情報は、この時のようにその手段を主系統以外にも確保しておくのが大切なことを学びました。

ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)4月8日版(第5489号)に掲載されたものです ー


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