二、(8)応急復旧本番への準備

第三章 一日でも早く

 

 この日は次の一手に向けた準備も始まりました。

 宇和島市管工事組合の大矢氏から10時10分に電話が入ります。松山市管工事組合から応急復旧の応援隊が来た場合、駐車場をどこに確保するのかとの相談でした。

 話を聞いていて、ある候補地が浮かんでいたのでしたが、大矢氏が挙げたのも同じ所です。宇和島市管工事組合事務所の道路を挟んだ反対側にある、給食センター跡地と天赦公園の駐車場です。ここならば最も効率がいいでしょう。

 私は早速この両方を確保しようと、まず給食センターを所管している市教育委員会の米山教育総務課長へ電話を入れました。米山課長は了承の即答です。未利用地という事情もあったのでしょうが、受け答えに心意気を感じました。

 次に市建設部の川田都市整備課長への電話です。私より2つ年下の川田課長は、常に慎重かつ大胆な頭の非常に優れた大物です。私がこの1年少々前に都市整備課長から水道局長へ昇格した際、実は正直なところ私自身その見込みは無いと思っていました。当時建設課長だった彼は私よりも過去の昇格がいつも大幅に早く、また、優秀な人材が上に立てばいいと思っていた私は、そんな彼が上がると思っていましたので。この番狂わせには周囲も驚いていたようでしたが、私自身にとってはもっと大きなものでした。昇格内示で市長室に呼ばれる際、スーツ姿で向かうのが宇和島市役所の慣例なのですが、予想していなかった故に普段通りラフな格好で出勤していた私は、ワイシャツの上に作業着の上着を羽織るという出で立ちしかなかったのです。

 さて、その彼からの返答はほぼ予想通りでした。天赦公園は宇和島市の中心市街地にぽっかり空いた貴重なオープンスペースです。その駐車場はあくまで利用者のもの。そこを使用する時は、給食センター跡地では入りきらない時にして欲しいというものです。そのような即時ながらも条件付きの返答、逆の立場だったなら私はおそらく同じ対応をしたことでしょう。

 両課長からの了承を得られたことから、管工事組合の要請から25分という短時間で、駐車場確保完了の折り返し電話を大矢氏に入れることができました。更に13時15分、川田都市整備課長から追加の電話です。天赦公園の広場部分も場合によっては使用しても構わないと。この危機を乗り越えるため、要請以上のことを考えてくれていたことに感謝!

ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)5月31日版(第5500号)に掲載されたものです ー


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