五、(10)もうすぐ

第三章 一日でも早く

 

 電話を終えると、すぐに市長公室の白瀬主任から電話です。市長からの伝言を私に伝えるためでした。前日夕方には断水戸数が77戸まで減ったこともあり、市長は飲用の安全宣言を一日も早く出したいとの考えのようです。当然私も同じ思いです。でも水質試験に合格するまで待つしかありません。私はそれを伝えるのみです。

 受話器を置くと再び電話が鳴ります。今度は水産課の三宮課長です。そう言えばメールが入っていたようですが、その確認の連絡です。生活用水応急給水拠点の水槽から一旦水を抜き、場所場所によって必要ならば空の水槽のみを置いておいてはどうかとの提案でした。利用が少なくなった水槽の衛生面を気にしての考えは納得できます。必要な時には給水体制を速やかに再構築するとのことでしたので、私がその案に反対する理由はありません。断水解消と飲用の安全宣言というゴールを見据えた動きが、さらに活発になってきました。

 その安全宣言には、末端給水栓で採水したサンプルを検査している南予地方水道水質検査協議会水質検査センターからの結果を待たなければなりません。

 三間地域で通水が始まったのが8月3日で、その日には代替浄水施設出口でサンプルを採水しセンターに送っています。結果が出るまで2~3日とのことでしたので、その結果は既に数日前、合格したという情報として南予水道企業団から我々に届いていました。

 そして各配水区の末端までその水が行き渡る見込みの3日間を待ち、8月6日には末端給水栓からサンプルを採水しています。その検査結果が入ってくるのは早くてこの日、誰もがその吉報を待ち望んでいます。私も朝からそわそわしていましたが、知らせによるとどうやらその日は速報値にとどまるとのことでした。正式な結果は、どうやら翌日まで待たなければならないとの連絡が入ってきました。

 既に安全宣言の放送文やニュースリリースの案は完成しています。あとはGOサインを出すだけです。安全宣言をまだ出せないと市長公室白瀬主任経由で市長へ伝えてから2時間後の10時40分、私は再び同じルートで市長へ報告しました。検査結果の判明が翌日になる可能性が高くなったということを。

 早く欲しい知らせですが、我々は待つしかありません。もどかしさを胸に、14時15分三間支所の樺支所長へ電話を入れ、同様のことを私は伝えました。安全宣言翌日の正午限りで全応急給水所を閉鎖するという方針を添えて。

 もうすぐ、本当にもうすぐです。断水を強い続けてきた皆さんに再び命の水を届けることができるのは。そう誰もがそう信じていたのでした、この時は。

ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)10月28日版(第5535号)に掲載されたものです ー


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