しかし…、同時に困った報告もありました。当初移送の予定だった市立吉田病院とオレンジ荘の入院患者・入所者ですが、搬送は容体変化の危険性を伴うというDMATの進言で中止となったそうなのです。病院に必要な水の量はかなりのものとなります。しかもその緊急性は健常者の比ではありません。
陸上自衛隊からは、早期の応急給水支援開始に向けた準備が行われているとの報告が本部会議の場でありました。ただ、既にその情報を入手していた水道局は、それを一般市民への応急給水活動の一部として組み込み済みだったのです。そのため、入院患者への対策を新たに考えなければならなくなったのですが、我々にはそんな余力はありません。
本部会議から柿原水道本局に帰りしばらくした21時ごろ、病院局事務方トップの石本医療行政管理部長ら数名が来局しました。我々が何しろわからなかったことは、いつ・どこに・どれだけの浄水を供給しなければならないのかということでした。
事情を聞いていてわかったことは、その時はまだ受水槽に浄水が残っているということでした。しかし翌日の夕方頃にはそれも空になる。ただそのほかの情報、例えば必要水量・受水槽の位置・高さ・車両横づけの可否等々、分からないことだらけです。それを揃えてもらい再度対応策を協議するということでその晩は別れました。
ー この記事の原文は水道産業新聞2020年(令和2年)10月12日版(第5447号)に掲載されたものです ー
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