本部会議では新たな情報が大きなもので四つ報告されました。
1点目は、市長会ルートの支援要請の結果、鳴門市から給水車が派遣されることが決まったということ。
2点目は、航空自衛隊が市立吉田病院への給水支援を行うことが決定したということ。
3点目は、被災地の各学校で生徒が手を洗う水に困っているということ。
4点目は、国土交通省がドローンで被災地を空撮したということ。
やはり水に関するものが中心でしたが、その中でも市立吉田病院への空自による給水支援が決まったことは大きな出来事でした。病院局の職員によって薄氷を踏む思いで続けられていた給水活動が、確固たるものに移行していくことが決まったのですから。
一方その頃、我々が最も欲しかった情報が被害の全貌でした。ほぼ見えてきた道路状況と違い、土砂災害の発生箇所や程度がまるっきりわからなかったのです。それが無ければ、吉田浄水場代替策はもとより自己水源を利用した断水解消策についても、2次災害というリスクに対する妥当性を検証できないため立案しようがありません。その点で、ドローンによる空撮データに我々は期待したのです。
この日の夜に届いたこのデータの中には、結局水道施設に関連する地区を撮影したものはありませんでした。しかしながら表層崩壊にとどまらない斜面の変わりようから、今回の土砂災害が過去のものとは違うということを知ることができたのです。
全貌をつかむことができたのは、早くも翌11日に国土地理院によって撮影された、高解像度の空中写真データによってでした。
写真には吉田地域を中心にいたるところで発生した土砂災害が生々しい傷跡、いや、まだ切り裂かれたばかりの大きな傷として写し出されています。まるで怪獣がその鋭利な爪で山腹を引っ掻きながら暴れたかのように。また海岸沿いの災害現場は、海まで土砂が達していることがわかります。市職員OBのBさんが土砂と共に海へ流されていった現場でも…。
悲しみも写るこのデータは、一方では貴重なデータとして大型カラープリンタで十数枚に分割印刷され、この災害に対する一連の水道局対応が一段落するまで私の執務室の壁一面に貼られていました。これが無ければ、多種多様な対応の事前検証を行うことは困難だったでしょう。国土地理院の過去の経験が、このような迅速な対応に活かされたのは間違いないでしょう。
ところでご存じの方も多いとは思いますが、これまでに発生した地震や台風・豪雨災害によって日本列島が受けたダメージは、空撮データによってこの災害同様国土地理院の地理院地図ウェブサイトで公開されています。地図データなどと共にレイヤで呼び出すことができるだけでなく、おおよその標高データの把握も簡単にでき、しかも誰でも閲覧が可能となっています。常日頃、私を含めネットでの地図・空中写真データ閲覧をG社のマップに頼っている日本人、もう少しこの地理院地図のありがたみを知るべきではないでしょうか。
ー この記事の原文は水道産業新聞2020年(令和2年)10月29日版(第5451号)に掲載されたものです ー
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