母の通院介助を終え遅めの出勤です。鴨脇課長から議会が無事終わったとの報告を受け彼をねぎらい、その後単身向かった先は三間地域にある則(すなはち)配水池です。
通水セレモニーの件を仁村給水課長に前日伝えた際、開催可能なのは則配水池しかないことを確認していました。
宇和島市ではほぼ全て山の上に設けた配水池から各配水区に配水しています。ただリアス式地形で急峻な山ばかりの当市では、各配水池への管理用通路のほとんどが階段で、車を横付けにできるところが限られています。そんな中、被災地の各配水池のうち則配水池だけは県道に接していて、多くの人が参集してのセレモニーに適していました。ただ話に聞くだけで私はそこへ行ったことがありません。百聞は一見に如かず、私はこの目でその状況を確認しに行ったのです。
15時過ぎ、間もなく到着というところで県道は全面通行止めとなっています。土砂災害自体は少なかった三間地域でしたがこの先で土砂崩れが発生、その影響でこのような措置になっていたのです。
私は県道脇に車を停め、歩いて現地に向かいました。その先は上り坂です。真夏の暑い中大汗をかきながら歩みを進めていくと、何人もの人の話し声が聞こえてきます。また視界には何台もの車が停められている様子も入ってきました。県道法面の上に見える配水池の回りでは、この日除草作業が行われていたのでした。仁村が既に先を見越して除草の指示を出していたのです。流石です。
宇和島市の水道事業は比較的官民連携が進んでいて、浄水場の運転や維持管理は民間業者に第三者委託しています。検針業務などの民間委託も既に行っていて、あとはプロポーザルで選定作業が始まった窓口業務を委託すれば、官民連携はほぼ完成というところまできていました。
全員の顔までは認識していない私ですが、馴染みの顔も見えます。私は大きな声でねぎらいの声をかけました。社員たちも逆に私にあいさつをしてくれます。前々から思っていましたが本当に素晴らしい社員たちです。人とのコミュニケーションの〝いろは〟の〝い〟「あいさつ」、これをきちんとわきまえています。
そのうちの一人が私に言いました。「いやいや、大きな蜂の巣がありましたよ」と。蜂が大の苦手の私は、背中に冷たいものを感じつつも穏やかさを装い聞きました。「駆除は終わったのですか?」と。実は私が到着する直前に巣を発見したそうなので、その時は殺虫剤の入手に走っていたそうなのです。そのため休憩を兼ねてそれを待っているとのことでした。災害に向けた事前の準備同様、何事も余裕を持っての準備が大切ですね。
局に戻った私は、同い年の建設部香堂部長に電話を入れました。則配水池で通水のセレモニーが開催される可能性が高いこと。その際、知事を始めとした要人が参集するかもしれないこと。そのため土砂災害発生箇所の手前に位置する則配水池までは、車を通す必要性が生じるかもしれないと私は伝えます。香堂は私に言いました。道路管理者である県の南予地方局建設部に情報提供し、対応してもらうようにすると。そのため具体的な計画が固まったのちに、あらためて連絡するということとしたのです。
17時、1時間後の本庁災害対策本部会議を前に市長室に寄りました。通水開始日時の確認と、それに際してのセレモニーをどうするのかについての協議を行うためです。
南予水道企業団が調整した結果、代替浄水施設は吉田地域に先駆けて三間地域で完成する見通しとなりました。誰もが待ち望むその日は8月3日の金曜日、時刻は午前10時です。その日時をもって配水が開始されます。地域の市民に対し注意事項を広報するため、各戸への瓦版の配布、地域への放送、また、報道へのニュースリリースを事前に行うこととしました。その実施は8月1日の午後、準備でき次第です。
配水開始までには中山池自然公園に設置した代替浄水施設からの送水で、則・成家・元宗の各配水池に水を満たし、3日10時から全配水池から一斉に配水を開始、各所に配置した職員が漏水等のチェックを行いながら末端まで水を行き渡らせる。そして水質検査に合格してから飲用可能のアナウンスを流すという、この日までに浄水担当の南予水道企業団と送配給水担当の宇和島市水道局で調整してきた段取りのとおりです。
則配水池での通水式の開催を含め市長と副市長が了承、ついに次のステップが見えてきました。
ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)6月24日版(第5506号)に掲載されたものです ー
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