13時25分、南予水道企業団竹本事務局長の来室です。通水が開始後の〝ある一手〟についてわざわざ連絡に出向いてくれたのです。
三間地域の代替浄水施設の水源を農業用ため池の中山池とすることは既知のとおりです。ただ、その上流には別の農地が広がっています。そのため雨水とともに農薬も中山池に流入しているのは容易に想像できることです。
通水開始後の水質検査は、基本的に通常通り「水質検査センター」で行うことにしています。ただ農薬に関しては慎重にしておくべきと考え、より専門的な民間の試験場に依頼することにしたと説明しに来てくれたのでした。
なおこのセンターは、南予地方の一部を除く3市4町2企業団で構成される南予地方水道水質検査協議会が運営する水質検査機関で、昭和60年の設立後、構成団体の水質検査のほとんどを担ってきた、いわば広域連携の先駆けともいえる機関です。
私は定年退職まであと半年という時、諸事情により南予水道企業団とこの協議会双方の事務局長を宇和島市水道局長と併任することとなります。そして理科の実験室を連想させるこのセンターが担っている責務の重さを、短い期間ではありましたが経験することとなったのでした。
なにせ測定ミスは住民の健康被害に直結するのですから、宇和島市内の浄水場や原水での水質検査結果を眺めながら『ふーん』程度にしか感じていなかった併任前と違い、数字を細かく見始めたのはその責務の重さから来たものだったのでしょう。
竹本事務局長が帰りしばらくした13時50分、議会事務局の中松事務局長から、水産業者によって継続されている生活用水の供給の件で電話が入りました。
通水開始が視界に入ってきたことから、その作業が近日中に終わるとお世話役の水産課から聞いたというのです。水道局には何の相談も入っていません。断水区域に住む中松事務局長は水道の通水にはまだ時間がかかるのではと私に問いかけます。私は当然ながら答えました。「その通りですよ」と。
何かの誤報ではないかと思いましたが、18時からの本庁災害対策本部会議で私は確認のために発言しました。仮に代替浄水施設からの通水が始まっても全域への通水までには時間がかかることから、飲用水の応急給水はもちろんのこと、生活用水の応急給水も当面継続が必要な事を。
ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)7月12日版(第5511号)に掲載されたものです ー
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