四、(3)吉田地域の通水に向け

第三章 一日でも早く

 

 さて、断水解消から遡ること2時間の15時、吉田地域の通水見込みが立ったことから、そのセレモニーとしての「開栓式」を翌4日の午後0時45分から執り行うことを決定し、報道各社に向け一斉にニュースリリースで配信しました。この日の三間通水式から間髪入れず、次の一手を打つことができることになりました。両地域同時に通水が開始できれば最高だったのでしたが、1日違いならば吉田地域の皆さんも許してくれるでしょう。出来得る限りの我々の対応に、これまで批判的な言葉は届いてきていません。吉田の皆さま、もう少しだけ待ってください。

 なお通水が開始されてからは、漏水と共に流量の心配もしなくてはなりません。突貫でしたので、必要水量の7割程度の浄水能力しかまだ無いのですから。そのため事前の放送や報道機関へのニュースリリースによって広報活動を強化していました。最大限の節水要請と時間断水を行う可能性があるということを。

 配水開始直後から我々は流量を注意深く見守っていました。でも給水課のモニターに映し出される配水量のデータは、地域住民が呼びかけに応じて節水に頑張ってくれているのを如実に表しています。この調子ならば断水は回避できそうです。16時35分に両課長と協議し、各家庭の使用水量が多くなる18時頃最終判断をすることとしました。

 その18時は本庁災害対策本部会議に私が出席する時刻です。最終的に17時50分、既に本庁に到着していた私に給水課長の仁村から報告が入りました。流量データから判断すると断水は回避できるとのことです。地域の理解のおかげですが、こののちもしばらく不便を強いることになりそうです。

 本庁災害対策本部会議では、この日の三間通水式と翌日13時から執り行われる予定の吉田開栓式について報告しました。またそれと共に、無事に通水が開始されたのちも三間地域を含めた安定供給には程遠い状況のため、自衛隊を含め応急給水体制を当面維持してもらうことも要請しました。

 帰局後の20時、副市長からの電話です。吉田開栓式は吉田愛児園を会場に12時45分に市長挨拶で始まり、その後幼児による手洗い場の水栓開栓へと続き、そして私が中心となって行う記者発表へと進んでいきます。その際、吉田愛児園が属する北小路配水区への配水池開栓は何時ごろを見込んでいるのかについての確認でした。

 公式ではありませんが、今回も知事が出席する見込みのようです。三間通水式後に知事が待機する場所へ水が届かなかったという事実が、慎重な副市長を更に慎重にさせたのかもしれません。私は局内打ち合わせで確認済みの、12時30分頃という北小路配水池での弁操作開始予定を伝えました。

 なおその日の深夜、給水課の職員によって密かに進められてきた、自己水源を利用した断水地区の幹線漏水調査が堂の下ポンプ場付近まで進み、沿線の断水が解消されました。

 このポンプ場には二次配水区の奥南配水区へ送水するためのポンプ場が備えられています。奥南地区では人的被害が発生。未だ片付けを行えないこの地、更には三次配水区の大良配水区へ水を届ける見込みがやっとつきました。

ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)9月16日版(第5525号)に掲載されたものです ー


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