五、(1)ゴールを見据え

第三章 一日でも早く

 

 9時20分、自席の電話が鳴りました。相手は厚労本省の是川水道課長です。昨日までの三間・吉田両地域での通水開始に対する祝意と、あと少しだけ必要な奮闘への激励を私に伝えるため、わざわざ電話してくれたのでした。私は心からありがたいと思いました。私がお礼の電話をかける立場なのに。

 11時15分、応急給水の指揮のために駐在中の松山市公営企業局日吉課長の来室です。その時12台だった応急給水活動のための加圧給水車を、9台体制に再編成したいとの申し入れでした。支援側も通水状況を見据えながら、ゴールに向かって進み始めました。指揮を一任している私は、その申し入れに異論などある訳がありません。

 なお、当初柿原本局2階会議室を指揮所としていた支援の応急給水班は、隣接する浄水棟2階の大会議室にその場を移していました。ほぼ任せっきりの同班と異なり、こちらも指揮を含めて依頼中の応急復旧班については、土地勘のある宇和島市水道局の職員との意思疎通が重要となってきます。そのため、約2週間前に始めた準備を経て、数日前には柿原本局2階会議室をその指揮所に充てていたのでした。

 13時過ぎ、今度は市長公室からの電話です。近日中に市長の東京への出張が決まりそうとのことで、その際、日水協本部訪問も視野に入れているようでした。そのため、連絡窓口を尋ねてきたのです。市長はゴールに向かう動きを強めてきましたが、我々はまだ道半ば、その時の私にとって優先度が低いと思われたこの問い合わせに対する返事は、「わからない」の一言でした。

 なおこの件、すぐに松山市の平松管理者へ連絡です。私は日水協の本部と地方支部・県支部との関係がわかりません。ただ、県支部を飛び越えて本部を訪問することに若干の引っ掛かりがあったのです。平松管理者からはそれが杞憂である旨の返答です。私は若い頃、小さなほころびを放置して大失敗をしたことがあります。引っかかったことをそのままにすることが減ったのは、きっとその反省から来たものでしょう。〝若い頃の失敗は将来役に立つ〟、世間で言い古されているこの言葉は私にも当てはまるものでした。

ー この記事の原文は水道産業新聞2021年(令和3年)10月4日版(第5529号)に掲載されたものです ー


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