三、(1)長期化必至か

第四章 新たな闘い

 吉報が届かなかった8月18・19日の週末が明け、柿原の水道本局・隣接する南予水道企業団には重苦しい空気が漂っていました。末端給水栓からの採水と水質検査を毎日続けているものの、一向に消毒副生成物の減少する気配が見えないのです。それどころか、逆に悪化しているといったほうが正しいかもしれません。

 南予水道企業団では、既に活性炭槽の設置だけでなく、その増設や後次亜装置の設置とともにPAC増量などハード面の増強を終え、そして前次亜・後次亜それぞれの濃度を少しずつ調整しながら運転するなど多くの対策を実施中です。それにもかかわらず効果が現れません。

 発災以降は真夏の日照りが続き、少々の雨ではお湿りにもなりません。三間地域代替浄水施設の水源となる農業用ため池の中山池は、24時間取水を続けられる一方で流入する水がほとんど無く、水位は低下する一方です。しかも比較的水質の良い層から優先して取水されていくため、原水の水質悪化が目に見えて顕著になってきてきました。

 また検討を進めていた配水池での次亜塩素酸直接混入も、様々な要因が障壁となって実現は困難との結論が出るなど、我々は完全に手詰まり感を抱き始めていたのです。

 この日も朝から断続的に副市長と電話でやり取りをしていました。この頃の副市長は、災害対応で多忙を極める市長に代わる私の相談相手です。

 15時からの電話で私はこれらの状況から、問題の解決には野村ダム原水の切り替えまで待たなければならなくなる可能性があることを伝えました。ただ、水質の微妙な変化を逃さないよう高頻度での検査を継続するということを添えて。

 副市長は私の口調から察したのか、一つのアドバイスを私に伝えました。水道局も南予水道企業団も最大限の対応をしている。そのため、両組織ともに責任感を必要以上に持たないように、との。

 この一言が私にのしかかっていた重いものを、完全ではありませんが取り払ってくれました。ややもすれば孤独になりがちな現場トップの私にとって、このような相談相手がいてくれたことは幸運なことでした。平時は細部にわたる指摘・突っ込みで、特に市長部局の皆を困惑させてくれますが。

ー この記事の原文は水道産業新聞2022年(令和4年)1月13日版(第5552号)に掲載されたものです ー


《無断転載はお断りいたします。》

*登場する人物や組織に対する私の意見・感想は、個々の評価を意図したものではありません。また、臨場感を伴わせて全容をお伝えするために人名を記載していますが、文面に対する人それぞれの捉え方に配慮し全て仮名としています。ご理解のほどよろしくお願いいたします。

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました