翌8月20日は始業時刻から、私の部屋で南予水道企業団を交えた協議を行っていました。できることは全てやることを基本に、各自色々な案を出し合ったのです。
私は前日の副市長からのアドバイスを出席者全員に伝えたあと、良質な原水を取るための取水口対策を思いつきの画で伝えました。ちなみにこの案、実際に南予水道企業団によって試されたことを私は現場の痕跡で知ったのでしたが、残念ながら効果はなかったようでした。
さてそんな協議が続く8時50分、部屋の入り口ドアを誰かがノックします。なんと、再び厚労本省是川水道課長の来訪を受けたのです。それも突然に。協議中の全員が入り口を見てびっくりです。
相変わらずの温和な表情で、突然の訪問を是川課長は詫びました。お盆の里帰りついでに、わざわざ覗いてくれたそうなのですが、いえいえこれ以上無いほど最高のタイミングです。ちょうど相談したいことがありましたので。
我々はここぞとばかりに現状の説明をしました。前次亜に加えて後次亜を追加、活性炭槽の増設、PAC増量、そして取水口対策等々、これまでの対策をまず伝えて理解を得ようと。是川課長は頷きながら我々からの説明を聞き、そしてやるべきことは全てやっているということを把握したのか、納得の表情を見せました。
次に我々は本題に入りました。非常用水源から短期的に取水する場合、水質基準の特例のようなものが無いかと質問したのです。
是川課長は「うーん」と唸ったあと、苦しい表情で特例などは無いことを我々に伝えます。断言されてしまいました。淡い期待を抱いていたのでしたが、甘かった。
そのあとも是川課長は何かを考え込んでいました。そして、沸騰させれば消毒副生成物は除去されるのだがと独り言のように呟きます。ただその直後、自分が発した言葉を捕縛するかのように、それを公に発表することはできないという明確な一言を追加したのでした。
親身になって考えてくれた是川課長でしたが、そのことで逆に抜け道など無いことを我々は再認識させられたのです。
ー この記事の原文は水道産業新聞2022年(令和4年)1月13日版(第5552号)に掲載されたものです ー
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