三、(10)2期工事の報道発表

第四章 新たな闘い

 その日の午前10時過ぎ、既に台風第21号の宇和島への影響が回避されそうだとの見通しが示されていた頃、副市長からの電話が入りました。

 翌日の午前11時30分から、南予水道企業団による代替浄水施設2期工事について、報道各社を集め発表することが決まったとのことです。そして、私もそこへ同席するようにとの要請も添えられました。私は事業主体の関係者ではありません。ただその頃は既に、南予水道企業団と宇和島市水道局は一体に近いものとして外部から見られていたでしょうから、私に断る理由などありません。

 報道発表の9月5日は、まず午前9時から本庁で災害復興本部会議が開催されました。当然私も出席しましたが、それが終了し報道発表が始まるまで2時間近く空いています。柿原水道本局との往復には車で40分前後必要ですので残りは1時間少々、わずかな時間でしたが、本庁で無駄な時間を過ごすよりも有意義と思い私は一度帰ることとしました。その時間を使って何をしたのか記憶にはありませんが。

 さて定刻の11時30分、私は市長室での報道発表に同席していました。

 まず市長から状況報告です。両地域での通水に際し協力してくれた多くの関係者への謝辞や、三間地域での飲用制限の継続に対するお詫びに続き、多くの対策を講じながらも効果が現れないという現状を説明していきます。そして、2期工事の概要説明です。2期工事では機器の増設などとともに、三間地域へ向けた野村ダム原水の導水施設を新たに整備することで、今後10年程度の運転継続を目標に施設の安定化を図ります。市長は企業長の立場で、その概要をスケジュールとともに報道各社に説明していきました。

 そして簡単な質疑応答が終わるとこれまでの報道発表同様、市長以外は隣接する特別室に会場を移動して詳細説明です。説明者側にはこれも同じく南予水道企業団の竹本事務局長と保利浄水課長、そして私の3名です。副市長はいつもどおり報道陣の後ろで我々を見守るように立っています。

 ここからは南予水道企業団が準備した配布資料に沿って、竹本事務局長が説明していきました。1ページ目の概要書をまとめたのは副市長でしょうが。

 市長からの説明と重複しながらも、まずは三間地域の水質の状況から説明が始まりました。この時、〝敵〟である消毒副生成物は気温の低下に弱いものの、抜本的な対策は野村ダム原水を早期に導水することと説明しています。我々水道局も企業団も、事態の長期化を覚悟していたということがこの説明に現れています。

 次に2期工事の内容を、整備箇所や導水管の布設ルートの選定理由を含め、こちらは正真正銘南予水道企業団が作成した図面や工程表・概算事業費内訳表などの別添配付資料に沿って詳細に説明していきました。

 説明が終わると質疑応答に移ったのですが、その時の記憶も記録も残っていません。質疑は企業団との簡単なやり取りだけで終わり、多分私の発言は無かったのではなかったかと思います。また、報道陣は以前より少なかったような気もします。三間地域での飲用制限は続いていましたが、一応は断水が解消されていたことがこのような温度差を生んだのでしょうか。

ー この記事の原文は水道産業新聞2022年(令和4年)2月14日版(第5560号)に掲載されたものです ー


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