三、(5)水質検査体制の見直し

第四章 新たな闘い

 8月22日に時を戻します。13時15分、南予水道企業団の竹本事務局長の来室です。水質検査についての相談でした。

 その時、いっこうに明かりが見えない三間地域の水質を検査していたのは、南予地方水道水質検査協議会の水質検査センターと愛媛県衛生研究所の2機関でした。そのうち水質検査センターの事務局長は彼が兼任しています。彼は部下の健康を案じて私に提案しました。水質検査センターの職員達は、通常業務に加えて三間地域の水質検査を高頻度で行っているため、検査件数が増加し休みを取れずに疲労が蓄積している。この状況が好転する兆候も見えないことから、長期化に備え週末の検査を中止し休ませたいと。

 私は彼の言うことを瞬時に理解しました。何故なら、水道局の職員達も同じ状況下に置かれていたからです。ただ、私は状況整理が必要と考え少しの猶予をもらいました。

 その約1時間後、副市長から電話が入りました。用件はすぐに終わったので、私は水質検査を担っているもう一つの機関、県衛生研究所の実情を伝えました。

 副市長の前職は愛媛県の総務部長でした。定年退職後の年明けに宇和島市副市長に招聘されたので、愛媛県庁の幹部職員は全員が後輩となります。その一人に衛生研究所を所管する部の金井部長がいました。三間地域分の水質検査を衛生研究所でも行うことになったのは、おそらくそのホットラインのおかげだったのでしょう。

 副市長は金井部長から、衛生研究所には余力があるため気兼ねなく検査を依頼して構わないと聞いていたそうです。そして私にそのことを伝えていました。ただ、どうやらそんな状況ではなかったみたいです。衛生研究所にサンプル水を持ち込んでいたのが、水道局だったか水質検査センターだったか記憶が曖昧なのですが、持ち込む際目にする衛生研究所側の様子が、日に日に変わっていっているとの報告を私は受けていたのです。聞いていたような余力など無いと私は副市長に伝えましたが、副市長は怪訝そうな反応です。このことはきちんと県の金井部長に伝わったでしょうか。

 現場からのシグナルを逃さないよう、感度の良いアンテナは大切です、。ただ一方では、非常時を中心に、一言「やれ」と敢えて鬼のような指示をしなければならないこともあります。私も程度の大小は別として同様でした。ただきちんとケアしていかなければ、現場はその力を最大限出してくれないということを理解した上でのことでした。「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」という昔見た映画での有名な台詞、ご記憶の皆さまも多いかと思います。いつの世も、このすれ違いを放置すると取り返しが付かないことになりますので。

 翌23日、台風20号対応のために本庁災害対策本部が招集されたのですが、その開始前、私は市長に水質検査の週末対応の変更を耳打ちしました。土曜日曜はサンプル採水を行わず、それに伴い水質検査も休みにするということを。

 市長は二つ返事で了解です。また、その災害対策本部を欠席していた副市長にも、会議終了後メールでそのことを伝えました。副市長も同様に理解を示してくれました。

ー この記事の原文は水道産業新聞2022年(令和4年)1月31日版(第5556号)に掲載されたものです ー


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