【金沢大学の研究会で発表してきました】

日々の出来事

 金沢大学で開催された「地震防災研究会」、私と繋ぐ糸は細いと思われたこの研究会で9月19日の土曜日、どなたかの代役ながらこれまでのご縁で発表させていただく機会をいただきました。

 題目を「都市防災について思うこと ~造園職公務員を終え~」として。

金沢大学自然科学研究棟2号館
金沢大学自然科学研究棟2号館玄関

 参加者は10名ほどで発表の持ち時間は30分程度と、これまで各地でさせていただいた講演・発表よりもこじんまりとした会でしたが、新たな個人事務所を設立して以来初、しかもコロナ禍でほとんど事務所兼自宅に閉じこもり、PCディスプレイに向かう毎日が続いていた中でしたので、実に新鮮な感覚を覚えました。
 そのため質疑を含めた4~50分はあっと言う間に過ぎ、あれを言えばよかったこれはいらなかった等々、終えたあと反省しきりだったのは言うまでもありません。

 ここではそのダイジェストをご紹介します。

1,平成30年7月豪雨

 在職時代に私が作成したパワーポイントデータを宇和島市水道局から提供していただいて、2年前の豪雨で起きた断水対応について概要を報告しました。

 この件に対する質問が結構ありましたが、この災害対応の全てを説明しようとすると1時間でも2時間でも全然足りません。手記で記録を残そうと思った理由はそこにもあります。
( → 手記「ちいさな道標」~平成30年7月豪雨 浄水場喪失からのドキュメント~

2,わたくし

 宇和島市職員で唯一無二だった造園職採用の私、その職種にとどまらなかった略歴を民間時代を含めて少しだけご紹介し、また、非日常体験指向にも触れました。

 造園職、このマイナーな職種の採用はおそらく宇和島市では今後も無いことでしょう。ただ、空間計画のコーディネイターとしての適性は他職よりもあると、私は思っています。

 それと造園職は「景観」を特に大切にします。それを求めてヨーロッパの色々な国・まちをこれまで訪れました。でもまだまだ触れていない非日常がそこにはたくさんあります。

 渡航ができないコロナ禍の今、その早期の終息を望むばかりですが、そんな今でも、昔からやってきたキャンプ等の非日常的な体験を進んでやっているところです。

3,防災という言葉

 私の抱く「防災」という言葉の違和感を述べました。

 生きている地球の営みを考えると、「防災」という言葉が本当に適切なのかと思ってしまいます。
 特に四国西南部の仏像構造線よりも南側は、南海トラフの沈み込みによる“削りカス”でできた土地、考えれば考えるほど、居住に適した土地が無くなってしまうという気持ちは強くなっていき、また、災害を完全に防ぐこと(ゼロリスク)はナンセンスとも思えてきます。
 ただ、何万年・何十万年という時間軸から現実的なスパンに戻すと、やはり「防災」とはリスク低減(減災)に尽きるというところに思考は落ち着きます。

4,これからのまちづくり(宇和島市を例に)

 宇和島市を例に、防災を視点としたこれからのまちづくりについて、思うところを述べました。

 江戸期から人口増に伴い拡大してきた市街地、そんなまちづくりは人口減少社会を迎えた今日、転換期を迎えています。
 宇和島を例にすると、土砂・津波災害のリスクが低い区域は、400数十年前の城下町形成初期のエリアとほぼ一致しています。
 これが偶然なのかそれとも当時の人が低リスクの場所以外に住もうとしなかったのか知る由もありませんが、これからは「立地適正化計画」等によって低リスクエリアへ居住区域を誘導し、コンパクトなまちづくりを行っていくことが基本になっていくのではないでしょうか。

 そういう点で、今後のまちづくりにはより自然科学が重要になっていくと感じます。

5,都市防災と造園職公務員

 造園職だからこそ可能な防災・減災対策、そして災害対応について、思うままに私見を述べました。

 「造園」の基盤は自然科学です。
 土木や建築のような工学系と同じような仕事をしてきましたが、そこが根本的に異なっているという事に、定年退職間際になって気づかされました。

 そんな造園職が担うのは、都市化で失われている自然やオープンスペースを保存・保全したり、また、回復させていくところにあります。
 これらは「居心地の良い空間」の必須コンポーネントで、裏を返せば「防災・減災・災害対応」の必須コンポーネントでもあったのでした。ローマのトレビの泉などもその一つですね。

 空間計画のトータルコーディネイターの造園職は、平時はアウトサイダーの少数派ですが、災害時は先頭に立つことができる。これは自らの経験で感じたことです。
 「防災」に忘れてほしくないものは、このアウトサイダーの必要性ですが、もう一つ、非日常体験を心掛けることによって、先の見えない場面でも頭をクリアに保ち続けること、これがある意味最も大切な事なのかもしれません。

Cozy
Cozy

このような機会を与えていただき、本当にありがたかったです。
興味がありましたら、皆さまどうぞお声かけ下さい!

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